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大正鬼殺譚 〜炎柱の継子〜

第6章 日常





師範と団子を片手にお茶を飲みながら、

美玖はこの後どうしようか、と


1人頭をひねっていた。


確かに、まだ帰るには早い。


お茶を飲み終え、
杏寿郎が口を開いた。



美玖、どこか、
見たいところはあるか?


ん〜…今、考えていたんですけど…


そう言いながら店内をなんとなく見渡すと、
近くにあった鏡に目が行った…。


あっ…!
師範、ちょっとお買い物してもいいですか?



ああ!もちろんだ!
では、さっそく行くとしよう!



そう言って立ち上がると、
またはぐれてはいけないから、と

手を繋ぎ2人歩いた。


ー…


うわぁ〜〜!
どれも、可愛いなぁ〜〜!


美玖は、
簪が欲しかったようで、

宝飾店の棚を眺めては、
あれでもない、これでもない、と
楽しそうに選んでいた。


やはり、女子らしいところもあるのだな。

当然と言えば当然なのだが、

普段は隊服に身を包み、

簪でなく髪紐をつけ、
巾着でなく刀を片手に走り回っているので、

杏寿郎にとってはこれまた新鮮な事だった。


こうしていると、
普通の町娘にしか見えないな…。


杏寿郎は、
簪を選んでいる美玖の事を
ひどく、優しい表情で見つめていた。


…師範!


ふいに、美玖から声を掛けられる。


こっちと…こっち!
どっちが可愛いと思いますか?



…困った。意見を求められている。

美玖の手の中には、
銀製で、藤の花の飾りがあしらわれた簪と、
漆塗で、赤いガラス玉がついたシンプルな簪


すまない!俺にはよく分からないな!


むぅ!師範!
ちょっとは考えて下さい!



美玖は予想外に食い下がってきた。


……。

俺は美玖の手から簪を一つ取り、

美玖の髪の辺りにそれを当てた。


そうだな、この藤の花の簪がいいな。
歩くたび、揺れる様も愛らしい。


…似合うと、思いますか?


ああ!間違いない!



美玖は少し頬を染めて、
それじゃあ、これにしますと言った。


…可愛らしい…。

その様子を見ていた杏寿郎は
そんな事を思いながら、ハッとする。


俺は、今一体…何を…。




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