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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第2章 比翼連理




「そうですね。俺も、彼女にそう教わりました…」

つい口走った俺に、

「さっきあんたは、睦に
ずっと前から惚れてたって言ってたな。
それは、
睦があんたと出逢う前からって事かい?」

優しく訊く。

「…はい。十の、夏の頃…」

俺は正直に口をついた言葉を止めるように、
手で口元を塞いだ。
…何、ホントの事言ってんだ。
いや、だからって、気づくワケがねぇ。
あんな、ほんの一瞬の出来事…

「……宇髄さん」

「……はい」

「…俺ぁあんたの事、知ってるなぁ」

ぽつりと言った。
俺は、はっと彼を見る。
目が合うと、優しくにこっと笑ってみせた。
…俺は…。



「お待たせー」

俺たちの会話を遮るように、2階から
『おばちゃん』が1人降りてくる。
……睦は?

「ごめんねえ、時間かかっちゃって。
久し振りだったから……あら?睦ちゃん?」

『おばちゃん』も睦がいない事に気がつき
キョロキョロする。階段上を見上げ、

「あれ、何やってんの。早くいらっしゃいな」

そっちに向かって話しかける。
階上に、睦はいるらしい。

「…あの…でもちょっとコレは…」

見えない場所から睦の
戸惑うような声が聞こえてくる。
『おじちゃん』も何事かと見上げる。
俺の場所からは見えないが、
彼の座る場所からは階上が見上げられるのだ。

「おお⁉︎そりゃ隠れてちゃだめだろ睦!」

なんて少し興奮気味。
…何なんだ?

「おじちゃんまで!でもね…」

「でもじゃないよ。ホラ、私らそろそろ、
夕方の準備があるから、早く下りといでよ」

そう言いながら、彼女は俺に目配せする。
…ん?

「…うぅ…恥ずかしいんだけど、こんなの…」

出たな、睦の『恥ずかしい』。
時間がないと急かされ腹をくくったのか、
睦が階段を下りてくる音がする。

姿を現した睦は、
俺の心臓を見事に抉り取っていった。

着付けてもらった着物は
黒地に瑠璃色の大輪の花を散りばめた落ち着いた柄。
覗く半襟は、青の七宝文様、
中に花菱を入れた縁起のいいもの。
髪は大きくふわっと結い上げられ、
いつもすっぴんの顔には薄く化粧を施してある。




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