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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第11章 愛心




そんなつもりはなかったのに、
殊の外、彼の心には突き刺さったようで、
私は次の言葉を失った。

「……」

「どこのどいつだ!
お前は俺だけのもんだって言ってんだろ!」

声が震えてる。
…真に受けすぎ。

「他のヤローになんか絶対ぇ譲らねぇぞ!」

「…この桜だよ。毎朝毎晩、
私を癒やしてくれたから。
ぎゅってすると力をもらえたの」

私は振り返り、立派な大桜を見上げた。

「…そいつぁ、こいつぶった斬ってでも
お前を取り戻さねぇとなぁ」

大真面目に凄んで、桜の木を睨めあげる彼。
桜の木相手でもそんななの…?
呆れるような、嬉しいような…。

「大切な思い出の木なのでやめて下さい」

この人と出逢って少しした頃、ここでお話しをした。
私が彼を睨むと、

「お前の心を攫ってくヤツは何だろうが許さねぇ」

そんなことを本気で言う。

「じゃあ、もう私に淋しい思いをさせないの?」

拗ねたような言い方をした私に
ギクリと顔を強張らせ

「もう、全てカタはついたんだ。
これからは、お前のためだけに生きていける」

泣いてしまうんじゃないかと思うほどの
苦しそうな表情で言い切った。

聞き間違いでなければ、
カタがついたと、言った。
命を懸けた人たちの闘いは終わった、
という事だろうか。

「睦…睦頼むから、
抱きしめさせてくれ。
やっとお前の事だけ考えていられる。
やっとずっとそばにいられるんだ。
何も言わずに行ったのは悪かった。でも…っ」

宇髄さんは、言葉に詰まった。
『でも…』の、続き。
それどころじゃ、無かったんだよね?

でもそんな事、この人にはきっと言う事が出来ない。
命懸けだったこの人たちの前では
私の存在なんて瑣末なものだ。
結果、何も知らない私たちの為だったとはいえ、だ。
偉業を成すために、
私なんかに構っていられなかったのだろう。
だからといって、
私への愛が劣っているという事にはならない。

ちゃんと、わかっているよ。

「大丈夫。…わかっているから」

彼の震える手が、私を抱きしめたがっている。
なのに、私に遠慮して行き場を失った。
こんな宇髄さん、珍しい。
いつも、私に対しては強引なのに。

だから私は、切な気に瞳を揺らす宇髄さんに
ぎゅうっと抱きついた。


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