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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第11章 愛心




まだ青い葉を枝に飾っている桜を見上げた。
風に揺れるたび、ざわざわと音を立てる。
この音、だいすき。
優しい音楽みたいで。
しばらく目を閉じて、そのまま聞き入っていた。

「木じゃなく、俺に抱きついてくれね?」

もう、こんなふうに声をかけられるのにも慣れっこ。

ここ1か月ほど、この人には放置されていたから
もうあなたの事なんて忘れてしまったよーだ。

私はちょっといじけて、
彼の言葉とは反対に、木の幹に腕を回して抱きついた。

「……」

「…睦?木じゃなく、俺」

真後ろで声がする。

知らないよ。
何も言わずに出て行ったくせに。
いつもここで、私を待っててくれる、
この桜の方がいいもん。

ヘソを曲げている私を見て、
はぁ、と大きなため息をつく。

「睦ー…俺疲れた。
頼むから癒やして」

甘えた台詞を言いながら項垂れる彼。


「どうして、何も言わずに行くんですか」

「あぁ…ごめん…それは、一番気がかりだった」

きっと大変だったんだろう。
いつもの、
私には話さない類の、
オシゴト関係だったに違いない。

蜜璃ちゃんも、不死川さんも煉獄さんも
誰もいなかったもの。
その組織の、最終局面、だったのかなと
何となく思っていた。

話さないのはいいけれど、
何か一言あってもよかったと思うんだ。

「少しの間会えないよとか、
いつになるかはわからないけど待っててねとか
何かしらあってもいいでしょ…」

「そうだよな」

いつものように心の声を口に出してしまった私に
まともに答えてくれる。

「それどころじゃなかったのはわかるけど。
きっとね、私のこといつも考えてくれるのに、
こんな事になったのは、
どうしようもない理由があったんでしょうけど、
それでも私、最初のうちは
どうしたらいいかわからなくて、すごく怖かった」

意地悪してしまう私の気持ちもわかってよ。
ほんとにどうしたらいいか戸惑ったんだ。

「あんまりつらくって、
私、新しい恋人作ったから。もういいです」

「おい!どういうことだ!」

急に大きな声を出し、私を桜からひっぺがすと、
焦燥に駆られた表情で肩を掴み上げた。




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