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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第9章 好敵手




…注意深く、宇髄さんの様子を窺うけれど、
どうやら本当に…
寝入っているみたいだ。

頬を撫でてみたり、髪を緩く梳いてみたり
鼻をつまんでみたり、耳を引っ張ったり…

少し怒られそうな事をしてみても眉一つ動かさない。
…むむむ。

身動きが取れないから起きてもらいたいけれど、
起きたら起きたで、
どこにも行かせてもらえないような気がする。
でもどうせ
このままでもどうにもできないのだから…

本当はとっても…しづらいんだけど、
奥の手だ。
私は、眠る彼の頬を手で包み
形の良い唇に、自分のそれを触れさせた。
たったそれだけのことで、
こんなに緊張するのはなぜだろう。
初めてでもあるまいし…。

唇をゆっくり離しながら、そうっと目を開くと
宇髄さんの瞼もゆっくり開いて…
あ、やっと起きた、
と思った瞬間、
今度は彼から口づけをくれて
あんなに重たかった腕が羽のように
ふわりと浮いて私を引き寄せてくれる。

昨日のどす黒い気持ちがウソのように晴れた今、
私は思い切り、宇髄さんの首に抱きついて甘える。
そうできることが、とっても嬉しかった。

私に迷いが無くなったことを悟ったのか、
宇髄さんは口唇を離すと私の目を覗き込んだ。

「…おはよ、ございます」

「…ぉはよ」

「宇髄さん、私、大丈夫な気がします」

「…何、が…」

掠れた声、寝起きの瞳、気怠そうな吐息。
全てが愛しい。

「ちゃんと、宇髄さんのこと好きです」

「…」

理解してくれたのか、まだ頭が働かないのか、
宇髄さんの返事はない。
よしよしと頭を撫でて

「…行きたい所があるんです。
行かせて、くれる…?」

静かに訊いてみる。

「…1人で、行くのか?」

「…はい」

宇髄さんははっきりしてきたのか、
私を優しく抱きしめてから

「…どこへ行くんだ」

何かを押さえ込むように声を震わせた。

「…言っても、怒らない?」

「…怒、る、ような所なんだな」

諦めに近いため息をつく。
きっともう、わかっているんだろう。

「怒らせたり悲しませるような理由じゃないんです」

「じゃその理由とやらを話せ。
そしたら離してやるよ」

「聞いてくれるの?」

「あぁ。それから、
ちゃんと帰ってくるならな」

力いっぱい抱きしめられる。
その強い力の分だけ、
自分は愛されているんだと感じた。



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