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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第9章 好敵手




仔犬は不死川さんのほっぺたを思い切り舐めていて
その光景があまりにも可愛くて
私はまた笑ってしまった。

「不死川さん、ごはんを食べると元気が出ますよ!
特に今日のは
全部私の手作りなので効果絶大です!」
私は不死川さんの腕を引き
神社の拝殿前の階段まで引っ張っていく。

「オイ俺食うなんて言ってねェだろ」

「不死川さんは今食べなくちゃダメです」

「何だソレ。離せやァ」

そんな事を言いながら、
落ちないよう仔犬を片手で抱え
素直についてきてくれる。
本気で嫌なら振り解けばいい。
この体格差だ。簡単な事。
でも、ついてきてくれるのだ。

2人と1匹、並んで座ると
おにぎりを1つ、不死川さんの手に押しつけた。

「…何で俺がおめェとメシ食わなきゃなんねェんだ。
1人が淋しいならいてやるから、ちゃんと食え」

『1人で食えば?』
『何でよく知りもしねぇお前なんかと
メシ食わなきゃなんねぇんだ』

……あれ…何だろう…
聞いたことのある台詞。
…これはまずいような気がする。
誰かと、勘違いしてしまいそう。

私はぱっと前を向いて心を落ち着かせる。

「い、いえ…淋しいわけじゃなくて。
さっき不死川さんが切なそうに見えたので
ごはんでも食べて
元気出してもらいたかっただけなんです。
いつも多めに持ってきているので
お気になさらず…」

「…おめェどこ見てんだ。
…まァ…なら1コもらうわァ」

仔犬も不死川さんの持ったおにぎりを見上げて
舌を出していた。

「…おめェも食うか?」

おにぎりのてっぺんを指先で取ると掌に乗せ
その子の前に差し出した。
はむっと一口で食べる仔犬。
…お腹空いてたのかな。

「うまいかァ?」

ニコッとするその顔が本当に優しくて…

「不死川さん、何があって、
そんな傷だらけなんですか…?」

そんな、訊いたらいけないような事を口にしてしまう。

「…あァ?」

「だって、こんなに優しい人が、
どうしてこんなに痛そうなキズを抱えているの…?」

つい、額の傷痕に手を伸ばす。
触れる一瞬前、ぱしっとその手をつかまれて
私は我に返る。

「…っ…ごめんなさい!」

私はつかまれた腕を戻そうとしたが
強くつかまれたそれは離れないまま。

「…触らないので、離して下さい」

「……」



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