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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第9章 好敵手





不死川サンは、ハッと気づいたように私を見て
カッと頬を染めた。

「お前…っ。そうか、見たことあると思った」

慌てたように早口で言う。
私は胸が高鳴るのを感じていた。

「覚えていて下さったんですね」

「当たり前だァ。お前誰かに余計なこと話すなよ」

「…余計なこと…?」

不死川さんは言いにくそうにすると

「…俺が甘味処にいたとか…」

目をそらして頭を掻いた。
その仕草が少年みたいでキュンとする。
…何だ、可愛らしいんだな。

「…恥ずかしい事じゃないと思います。
私の知ってる人も、男の人だけど甘味大好きで
よく一緒に買いに行ったりするんですよ?」

甘いものをかじった時の
おじちゃんの幸せそうな顔を思い出して
私はつい笑ってしまった。
そんな私を怪しげに見る不死川さん。
しまった、完全に変なヤツだ。

「別に気にするコトじゃないって言いたかったんです!…あ、でも誰にも言いませんから
安心して下さいね」

私が見上げると、
変なモノを見るような目で私を見ていた。

「…何ですか」

さすがにちょっとムッとした私は
ちょっと睨んでみせる。
そんな目で見られるような事はしていない。
すると呆れたようにため息をついた。

「お前、変わってんな」

え?変わってる…?
『変なヤツだな』
…昔、そう言われた事を思い出した。
あの時みたい。
不死川さんも、
少しばかり私に気を許してくれたのか
帰ろうとするでもなく、その場に留まってくれた。

「…あの…」

私は足元を見て…

「その子…不死川さんのこと大好きですね」

笑ってしまうくらい、
不死川さんの足にしつこくじゃれついて
1人でずっと遊んでいる。
こちらを気にしないでいてくれて助かる。

「あァ…」

不死川さんはしゃがみ込み、仔犬を押しやった。
やっと相手にしてもらって嬉しかったのか
仔犬は全力で突進して行く。
それをまた押しやって、また突進してきて…

「おめェもう帰れや。母ちゃん…どこにいんだァ」

仔犬を両手で抱き上げ、鼻先同士をくっつける。
その声も、瞳も、何とも切なげで
私は胸がきゅっとなった。
仔犬ごと、抱きしめてあげたくなる程
淋しそうに見えて…
私はイケナイと自分を戒める。

「不死川さん!私今からお昼なんです!
一緒に食べましょう」

「…はァ…?」

呆けたように私を見上げた。

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