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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第1章 嚆矢濫觴




「ごめんなさい。もう大丈夫ですから……」


そうして宇髄サンの腕から逃れようとするが
殊の外力が強くて動けない。


「…あの…離して下さい」


しっかりしなくちゃ。
こんな事で、他の人を巻き込むなんて。

私がはっきりと言い切ると、
様子を窺うように私の顔を覗き込んでくる。
強そうな男の人が、こんなに優しげに接してくれると
何だかくすぐったい気持ちになる。


「ありがとうございました」


にこりと笑うと、宇髄サンは無言で固まった。

…あ、そういえば、


「昼間は失礼な事をしてすみませんでした。
気分悪くされましたよね?」


私は宇髄サンに謝った。
自分が感じた本当の心は隠して。
だって私はもう、髪留め作りに没頭した事で
気が晴れたから。


「いや、アレは、俺が…」


うん、そうですね。
でも、もういい。
もう大丈夫だ。

まぁでも、


「蜜璃ちゃんと2人きりになれたわけだし、
かえって良かったんですよね?」


何とか立ち上がりながら言うと、


「甘露寺⁉︎」


ぱっと私を見上げてくる。


「え?はい、私が帰って良かったでしょ?」


あぁ、立ち上がれた。
震えも収まった。


「宇髄サン、すごいです。
これはもう歩けます!」


あぁやって抱きしめてもらうと、
恐怖って収まるんだなぁ。
近所の赤ちゃんが、お母さんに抱っこされて
泣き止んでたけど、その気持ちがよくわかるなぁ。


「おい、待て!」


ほんわかしていると、ぐいっと、
すごい力で肩をつかまれる。
急な事で私は驚いた。

いつの間にか立ち上がっていた宇髄サンは、
ほぼ真上から見下ろしてくる。

何事かと見上げていると、


「あぁ、…こんな遅ぇ時分に
1人で帰すわけにはいかねぇ」

「…でも、いつもそうなので大丈夫ですよ?」

「つべこべ言うな。行くぞ」


私の前をどんどん行ってしまう。


「……本当にいいんですけど…」


でも、私の前を行く宇髄サンに、
ついて行くしかなかったのだった。


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