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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第6章 回想2




「ぅわあっ!」

ぎゅうっと、
あったかい腕が俺の首にしがみついてくる。
あ、怖かった、かな。
俺はなんて事ないけど、…そうだよな。
枝の上に立ち、
ぎゅっと抱きしめて安心させてやると
太い幹につかまらせ、
枝の付け根の座りやすい所に腰を下ろさせる。
俺は隣にしゃがみ、そいつを支えた。
垂らした足をぶんぶん揺すって、

「すごい!すごいね!すっごく跳んだね!」

随分興奮している様子だ。
支えといてよかった。
こんだけ揺すったら間違いなく落ちてる。
こいつ考えナシだな…

「わかったわかった」

わかったから、揺すんのやめろ。
何だこいつ、ほっとけねぇなぁ。
俺は感じた事のない、優しい気持ちを抱えていた。

「ホラ、向こうまで見えるぞ」

気をそらすように、景色へと促す。

「景色、見たかよオヒメサマ?」

可愛いオヒメサマ。
俺はおどけた軽口に、本心を織り混ぜた。

「…ぷっ。お姫様?」

どこが?と、聞こえてきそうな口ぶり。
そのまま遠くを眺めるこいつを、
こっそり、見つめていた。

「うわあー!」

素直に感嘆の声を上げる。
表情豊かで、コロコロ変わる。
最初のオドオドしたのとはまったく違って、
すっかり俺に心を開いている。
それが無性に可愛くて、嬉しかった。

「すごい。きれいだねぇ!
鳥はいつも、こんな景色を見てるんだね!」

こんなヤツが、俺の隣に居てくれねぇかな…。
俺のそばにいて、
そうやって、笑っていてくれねぇかな。
そしたらきっと、俺も楽しいに違いない。

にこりと振り向くそいつが、
俺の顔を見た途端、不思議そうに

「…どうしたの?」

と訊いてくる。


「お前、あの…さっきのメシ、
作れるように勉強してんだよな?」

「え…?うん、そうだよ」

「じゃいつか、作れるようになるんだろ」

「…うん。そうなれたらいいな」

自信なさげに返事をするから、

「そうなれよ」

俺は勢い込んで、力をこめて言った。

「う、うん」

やった。

「そしたら、毎日俺に食わして」

「えっ、毎日?」

毎日、のイミ、わかるか?

「そんなに気に入ったんなら、
おじちゃんのお店に行けば
今からでも食べられるよ?」

俺は思い切り、顔をしかめたと思う。
…わかってなかったからだコイツが。




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