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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第6章 回想2




…でも
こんな能天気なヤツが、
俺を想ってくれるなら、それも悪くねぇかな…。
こいつの顔を眺めながら
らしくねぇ事を考えていると、

「…食べないの?」

頬張ったメシを咀嚼しながら

「おいひいよ」

と話しかけてくる。
…行儀悪くね?
そのうちに、未だにぎりめしを持ったままの方の手首をつかまれ、口元へ持って行かされると

「あーん」

などとふざけた事をしやがる。

「自分で食えるわ!」

手を振り払うと、本当に?という表情で

「…そう」

と溢して、
自分はもう一口、メシを頬張った。
そうする毎に、幸せそうな顔をうかべる。
…メシって、そんなに幸せなもんだっけ…
ただ、腹を満たすだけじゃなかったか…。

「…お前、うまそうに食うな」

そんなに、コレうまいのか?
俺は手の中のにぎりめしを見やった。

「本当においしいからね」

にっこり笑うそれを、
ウソのような気持ちで見ていた。
メシを、うまいと思った事が、
ないような気がする。
しかも、このメシ、お前にとっちゃ…

「…コレ、お前のじゃねぇのか」

俺は、そいつの顔とにぎりめしを見比べる。

「私のだけど、まだあるから大丈夫だよ」



「そうじゃなくて…。お前の、命なんだろ」

命に、代えはきかねぇぞ。

「…うん」

「命なんて、分けてやるモンじゃねぇだろ。
こんな見ず知らずの人間に」

「…分けてなんかないよ。あげるんだよ」

「…」

「新しくあげたんだよ。
ちゃんと自分の力にかえてね」

「命を、俺にくれた…?」

こいつの言う『命』なんて、メシの事だ。
そんなのわかってる。
なのに俺はどうしても、文字通り、
命をこいつにもらったような気になってしまった。
こいつに、新しい命を吹き込んでもらえるなら、
あるいはこれからの俺の人生は、
劇的に変わるのかもしれない。

そうしたら俺は…。

「食べたらわかるよ」

にこっと笑うその顔は、俺の目を釘付けにする。
何だろう、この感覚は。
目が合った瞬間、それから逃げた俺は
何かをごまかすように

「いただきます」

と、一口、にぎりめしをかじった。
…ほんとだ。うまい。
ひたっていると、

「あ!」

小さく叫ぶ。

「え?」

「いただきます!」

思い出したように言うが…
もう食ってたろお前は。
色々なってねぇ娘だな。

「…遅ぇわ」


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