第2章 ep.01 憎むべき存在
ノム
「おい」
リディア
「え?…何?」
オレが声を掛けるとあからさまに驚きながらも首を傾げる
ノム
「何で嘘吐いてまで…爺さんに飯やったんだよ」
リディア
「あのお爺さんずっと見てたんだ。だけど、小さい子に勧めるばかりで自分は来ようとしなかったの」
ノム
「食いたくなかっただけかもしんねーだろ」
リディア
「それはないよ。食べたそうにしてたし…あ、えっと…嘘吐いたのは配った物だと小さい子にあげちゃうと思ったから。人の残りものだったらあげるわけにはいかないでしょ?だから、もらってくれるかなって」
ノム
「…へぇ」
何だよ…こいつ…人間よりも人間だな。
いや、人間よりも綺麗な心をしてる…心の変化に敏感で苦しみも知ってるから誰よりも優しい…っつー事か
成る程…な。
フリントがオレに腹立てて言った言葉が理解できた気がした。
こいつの事、何も知らねぇのに…あんな事しちまったのか。
けど、そう思ったって…簡単に受け入れられっかよ
【No side】
二人のやり取りを聞いていたヴィンスとフリントの唇は弧を描いていた。
少女
「…ねぇ、お姉ちゃん」
ノムとの会話を終えて鍋を混ぜていたリディアのワンピースの裾を引っ張る小さな力にリディアが下を見ると、そこには少女がいた
リディア
「どうしたの?」
少女と目線を合わせるようにしゃがみ込むリディアを見て、少女はもじもじとしながら唇を開いた
少女
「お、おかわりって…しても良いの?」
リディア
「ふふ、勿論。貴女達の為に作ったものだもん。沢山食べてくれた方が嬉しいな?」
怒られると思っていた少女だったが、リディアの言葉を聞けば花が咲いたような笑みを浮かべる
少女
「わぁ…本当?」
リディア
「本当」
少女
「このスープお姉ちゃんが作ったの?」
リディア
「そうだよ。気に入ってくれた?」
少女
「すっごく!…また来てくれる?」
楽しそうに会話をしていたが、少女の問いには無責任に自分だけでは決められない為リディアはヴィンスを振り返る
ヴィンス
「勿論。また来るよ」
彼の言葉に少女とリディアは同じ様な表情をして喜び、顔を見合わせていた