第2章 ep.01 憎むべき存在
リディア
「綺麗なのは洋服だけね」
婦人
「何ですって…?」
フリント
「おい…言ってやんなよ。ほら、んな大事なら離すなよ」
揶揄う様な笑みを浮かべてフリントは婦人へ鞄を返す。
だが、婦人はリディアが発した言葉が気に入らなかったのか彼女へと歩み寄ろうとするがその前にヴィンスが立った
ヴィンス
「金持ちなら心も広くなったらどう?」
婦人
「まっ…何なのよ!全く」
そんな対応をされた事がないであろう婦人は、綺麗に彩った顔を歪ませて去っていった。
それを見届けるとリディアは少年の前にしゃがみ
リディア
「これ…あげる」
彼女は少年の手を取ると硬貨を乗せた。
少年
「えっ…こんなに?」
リディア
「これで美味しい物を食べて」
少年
「ありがとう!ありがとう、姉ちゃん!」
彼等にとっては大金であろう硬貨を、ぎゅっと大事そうに握り締めて幼い笑顔を残して去っていった。
先程の光景は珍しいものではない。
此処では裕福な家庭と貧しい家庭では衣食住に大きな差がある。
子供でも関係なく当然の様に差別をするが、全ての裕福な人々が酷いわけではない…が、多くもない。
貧しい者達は家がなかったり、明日生きていけるかも分からないのでお金や食べ物の為なら盗みでも何でもする。
それは、街に近付く程に顕著でリディアが見たくなかったのはこれだった。
同族同士で争うのは苦しくて見てられない様だ
ヴィンス
「君は強いね」
フリント
「考えなしのお人好しって言ってくれ」
ヴィンス
「ははっ、そうとも言えるか」
フリント
「だが、俺もああいうのは嫌いだからな。いつもリディアに乗っちまう」
リディア
「フリントから行く時だってある」
フリント
「お前が言うな!」
リディア
「く、苦しい…!」
フリントの腕が首に回されるとリディアは笑いながらその腕を叩く。
そんな二人を見てヴィンスは小さく笑った