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自惚れFall in love

第1章 1町工場で


1町工場で
ある日の日信電機工業株式会社。車や機械などの部品を作る丹沢の町工場である。私、梨沙は伯父である晴康の退職の最後の挨拶しに会社にきた。62歳の伯父は嘱託社員で65歳まで働くつもりだったけれど最近、会社で倒れ、入院し、働くことが困難になり退職することになった。製造課部品加工係に行くなり、私は驚きの光景を目にした。36歳の係長こと近藤さんという人がいる。近藤さんはぺこぱの松陰寺さんに似ている。近藤さんとは私も顔なじみではあったけど、その隣で近藤さんに似ている人が。今日はアイシャドウはしていない。いや、うっすらとはしているけれど。「あ」「あ」そのアイシャドウ男は私を見るなり小さな声をあげた。私も小さな声をあげた。松陰寺さんだった。しかも本人。私がそこまで驚かなかったのは松陰寺さんこと、松井勇太さんとはメールのやりとりをするほどの恋仲だったからである。松井さんも私同様。「紹介しよう。今日からここで働くことになった松井勇太さんです」係長が紹介し、頭を下げる松井さん。松井さんのメールで知っていたけれど、彼は最近お笑い芸人の傍らこの町工場で働きたいという事で丹沢に引越してきたのだった。「宜しくお願いします」わたしと伯父にも挨拶をした。「じゃ、ちょっと僕は違う課に行かないとだからあとはよろしくね、梨沙ちゃん。あ、仲峰さんは事務課の方に来てほしいとのこと」
「はい。じゃ伯父さん課長さんに挨拶行ってくる」そう言って係長とうちの伯父さんはこの場所を後にした。「梨沙、会いたかったよ」「今日が松井さんの初出勤日だったとは知らなかったよ」「悪くないだろう」松井さんは初めての仕事で部品加工をしていた部品のネジ、通称FE511を手からばらばらっと床に落としたと思うと私の事を強く抱擁した。「好きだ!梨沙!」「松井さん、んっ」抱擁の後は、激しいキスをされた。ああ、松井さんとのファーストキス。「2人がいなくなるのを見計らってたんだ」「キザな松井さん」「キザーン。そして、俺は俺に自惚れてる。で、梨沙も梨沙に自惚れてる」もう!でもそういうとこが好きだけど。「近くのマンション住んでるんでしょ?」「うん。住んでる。でも今日位いいだろお前ん家行っって」「え?まあ、お客さん用の空き部屋はあるしいいけど」「じゃ、仕事終わったらね」で、ちょうどいいとこで係長が帰ってきたので、松井さんは真面目に作業に戻った。
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