• テキストサイズ

【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第3章 旅立ち




生きて戻ってきた者、町で傷を負った者、
その誰もがあの晩の鬼については触れなかった。
変わり果てた姿だったために、美雲の母と気づかなかったのか。美雲の母と気づきながらも黙っているのか。
美雲にはわからなかった。



もし気づいているのに黙ってくれているのであれば、美雲から話を切り出すのも変だ。
町に流れる空気には美雲への恨みは含まれていない。



町の復興には二月程かかった。すべてが元通りになったわけではないが、家々は綺麗に建て直され、あの日傷を負った人々も回復してきて、ほとんどが以前のように生活できている。



町の復興を祝って、宴会が開かれた。



「痛ましいことは起きたが、残った者たちでここまで町を戻すことができた!!ここからは人の盛り上がりで町を活気づけていこう!!!」



「「「 カンパーイッ!!! 」」」



男たちが次々に酒を飲む。まだ傷の癒えていない者もいるが、布団から起き上がり手を叩き歓声を上げている。



「ほらほらぁ!美雲も飲めよぉ!!!!」



早くも顔を真っ赤にした町人が美雲に酒を煽る。



「いやぁ、だめですよ~。未成年なんで。お気持ちだけ頂いておきますね。乾杯。」



煽られた酒瓶にお茶の入った湯飲みをコツンと当てた。



「ったく!!!イイ女になっちまってよぉ!!!」



酔った男はさらに顔を赤らめ、上機嫌だ。



「美雲の母ちゃんも町一番の美人だったよなァ!」



男は美雲の母のことを口にした。
盛り上がっていた宴は一瞬で静まり返った。まとわりつくような視線を肌で感じる。美雲は顔が上げれなくなった。


/ 230ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp