第2章 消えた雨粒
美雲のまわりに氷の蓮華が咲き乱れる。開花とともに蔦が伸びる。
蔦が美雲を守る。美雲から距離を話すように鬼を縛りあげる。
我ながら美しく神々しい血鬼術だと自賛する。
目の前に起きたことに驚いている美雲の姿が可愛らしいくて、また笑ってしまう。
(…さて。鬼狩りはどうしようかな。)
蔦を動かす。あの男を殺せ。情けなど不要だ。
蔦が男を取り囲む。
男が刀を構える。次の瞬間に起きたことは目だけでは理解出来なかった。
蓮華も蔦もパラパラと崩れ、消えていく。
童磨は頬杖をついていた手でポリポリと頭をかく。
(…見たことない技に身のこなしと言い、柱かな)
「…面白いことになったねぇ」
童磨は立ち上がる。
既に町で暴れた鬼のおかげで、この町に新鮮な女はいない。
美雲を迎えに行くために柱と戦ってもいいが、美雲をすぐ食べるつもりはない。そばに置いてみたいだけ。
今日は少し気分が高ぶっていた。早く人の血肉を喰らいたい。
柱との対決。時間の無駄遣いはしたくない、今回は見送る。
「…必ず迎えに行くからね。美雲。」
童磨は笑顔で呟く。その視線は美雲だけを見ている。
その姿は木々が重なる影へ溶け込むように消えていった。