• テキストサイズ

【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第18章 築く -音-



【冨岡side】

自室で1人になり、己の掌を握った。


食事のことを思い出す。
宇髄と楽しそうに話す白石の姿。その笑い声が耳に残っている。2人きりの食事の時は会話などない。無理に話題を振ってくることもなかったからそれでいいと思っていた。


しかし、宇髄に言われたように白石はつまらないと思っていたのかもしれない。


そして脳裏に焼き付いていたのは、宇髄に頭を撫でられ顔を赤らめる白石の姿だった。宇髄がそのまま白石の顔に触れた時、自分の感情が沸き立った。カッと頭に血がのぼる感覚。


気付けば立ち上がり、宇髄を離そうとした。
仮にも宇髄は客人で帰らそうとするのは失礼にあたるのも理解している。しかし、そんなこと後回しになるくらい腹が立った。


半ば無理矢理、宇髄を帰らせた後、白石と2人になった。
向き合った時、久しぶりにちゃんと白石の瑠璃色の瞳を見た。彼女の瞳に今の俺はどう映っているのだろうか。


宇髄が触れたように、いや触れた部分を上書きするかのように、彼女に触れたくて、手を伸ばした。
あと少しで触れるというところで手を引いた。自分の感情だけで触れていい訳がない。ましてや、自身の怒りを宇髄にぶつけてしまう己が恥ずかしい。未熟そのものだと毒付く。


彼女へ伸ばした己の掌を握った。感情のまま動いてしまったことに、それがまるで自分のものではないようだ。
冨岡は初めて姿を現した己自身に戸惑っていた。


/ 230ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp