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【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第18章 築く -音-




「まぁ、だれかと生活を共にするって言うのも悪くないよな。」


何もない壁に視線を移しながら、宇髄が呟く。


「…。」


「守りたい相手がいて、独りじゃないと思えるのって幸せなことだぜ。」


「…白石もここにいる目的が果たされれば、いつかは離れていく。」


何を語りかけても、いまいち響かない冨岡に宇髄は小さくため息を吐く。


「…冷めた奴だな。後先考えずにちゃんと今も大切にしろよ。」


「…。」


冨岡からの返答はなく、部屋はまた静かになる。どうにも話は盛り上がらない。


(こりゃ、美雲が大変だろうなぁ。)


宇髄はそう美雲の心配をするのであった。
部屋がまた静かになると、冨岡はゆっくりしていくといいと一言残すと客間を出て行った。


(…客人を1人残すとはどう言う状況だ。ったく。)


足を伸ばして座るように体勢を崩してみる。目を閉じれば、奥の部屋からトントンと包丁で野菜を切る音がする。
その後を聞いていると自分の妻たちの顔が思い浮かんだ。今日は妻たちに休みをあげている。家事ばかりさせていては息がつまるだろうと思い、配慮してのことだ。
帰りに何の土産を買おうかなんて考える。妻たちの喜んだ顔を思い浮かべると思わず顔が緩む。


「ふふふ、なにか嬉しいことでもありました?」


急に声を掛けられ、びくりとした。着物にたすき掛けした美雲が宇髄を笑いながら覗き込んでいた。
隊服姿しか見たことがなかったが、着物姿の美雲は剣士の片鱗などなく年頃の町娘だ。


「お待たせしました、お食事出来ましたよ。」


そう言い、宇髄の前に膳を並べていく。綺麗な柄の入った器に様々な料理が並んでいる。湯気とともに香る匂いにお腹が空いてくる。


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