第17章 芽生え -恋と蛇-
(美雲ちゃん、顔が真っ赤だわ…。もしかして、冨岡さんのこと…、)
(こいつ何を照れてれるんだ。もしや冨岡のこと…、)
冨岡が美雲の盆へ1つの小鉢を乗せた。
「…これ好きだろう。」
小鉢には苺が載っていた。美雲は果物全般が好物だ。そんな話をしたことは無かったが、生活を共にする中で知ったのだろう。美雲は冨岡に見られていたのだと思うと余計に恥ずかしかった。
「あ、ありがとうございます…。」
美雲は赤い顔を隠すように俯いたままお礼を言う。そして冨岡がくれた苺を食べた。口一杯に甘い味が広がる。ドキドキと高鳴る胸にその味が絡まっていく。
顔は熱く、早まる鼓動と恥ずかしさでいっぱいなのに、それと同時に高まる幸福感。苺だけではない何かを味わっているかのように、美雲は笑顔をこぼした。
( 好きなのね。 )
( 好きなんだな。)
冨岡の寄越した苺を幸せそうに味わい、笑みをこぼす美雲を見て、2人はそう確信するのであった。
しばらくすると後から来た2人の食事も次々と運ばれ、甘露路はパクパクと食べ器を空にしていく。その様子を伊黒は優しく見守っている。
「み、蜜璃さん、よく食べるんですねっ!!」
初めて甘露路の食べっぷりを見た美雲は目を丸くした。