第13章 募る
食事は屋敷で簡単に済ませることが多い。しかし、美雲がいるのであれば食事を奢ってやるのが立場的に普通かと考える。後輩のためであれば身体に鞭を打つ。
「なにか食いたいもんでもあるかァ?」
その言葉にきらきらと目を輝かす美雲。その子どものような可愛さに思わず、気が緩む。
ふと視線を前に向ける。見慣れた顔を見つけて、緩んでいた顔をしかめる。相手も気づいたのか、その足でこちらに近づいてくる。
不死川の険しい表情に気付き、美雲も視線の先を見る。その相手の顔をみて、目を丸くする。
「不死川…任務終わりか。ご苦労だった。」
「…うるせェ。」
見たくもない顔を見たと言わんばかりに悪態を着く。偶然出会ったのは冨岡義勇だった。
冨岡は不死川の傍らにいる美雲に目を向ける。蝶屋敷で見たあの瑠璃色の瞳と目があう。
「…白石か。」
鱗滝さんからの手紙と、蝶屋敷で印象に残った瞳から、名前は覚えている。ふいに名前を呼ばれ美雲は驚いたのか、丸い目をさらに丸くする。
「名前…知って下さっていたんですね!
挨拶が遅れて申し訳ありません。白石美雲です。以前、冨岡様に助けて頂いて、そのあと鱗滝さんのもとで修行をし、鬼殺隊に入りました。その節は、本当に、ありがとうございました。」
わたわたと早口で御礼を伝えると、美雲は深くお辞儀をする。
不死川は自分の知らないことを話す美雲に少し表情を曇らせた。美雲を見やると、恥ずかしいのか、顔は真っ赤になっている。その顔にまた、もやもやとした感情がうっすらと生まれる。