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【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第2章 消えた雨粒



父が亡くなりしばらくして私は仕事を再開した。
家に母を一人にすることは気が引けたが、私たちは生活を続けていかなければならない。生きるためにお金は必要だ。



しかし仕事は減らした。これまで父に使っていた薬の代金も不要になり、女2人ではかかる生活費もたかが知れている。
そして何より、母を1人にしておくことが心配だった。



母は父が亡くなって以来、気分の変調が激しくなった。
いつも通りの母かと思えば、突然声を荒げたりする。そして、1日に何度も何度も泣くのだ。
泣く理由は様々だ。父を亡くした悲しみ、娘に八つ当たりしてしまった後悔、これまでの幸せな家族からの一変。



母もいっぱいいっぱいなのだろうと、私は必死に母の声に耳を傾けた。どんな言葉をかけていいかわからない、だから聞くことしかできない。
母の感情を受け止めることができないもどかしさを感じる。



私は時間の許す限り母と向き合った。




しかし、私の力は及ばなかった。
母は俯くばかりで前に進めなかった。父の死から1か月もすれば、すっかり心を病んでしまっていた。


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