• テキストサイズ

日輪を繋ぐもの【鬼滅の刃/煉獄杏寿郎】

第10章 ⚫︎超短編⚫︎ 泣き笑いの空







「とても綺麗よ、杏火。」


白無垢に身を包み、真っ赤な紅を引いた唇が照れ臭そうに弧を描いた。
その笑った顔、やっぱりあの人にそっくりね。


「母さま。…今まで育ててくださって…っ…ありがとうございました」


こんな言葉を聞く日が来るなんて、どこかまだ信じられない自分がいる。


「ほら、泣くんじゃありません。お化粧が崩れてしまうわ。」

「うぅ…はい…」


杏火が、私の手に掛かる炎の羽織に触れる


「母さまと父さまの子に生まれて、私は本当に幸せ者です。」

「私達こそよ。親にしてくれてありがとう。
でもあなたはこれから、もっともっと幸せにならなきゃ。」

「はい。」





穏やかな晴れ空の下、杏火がゆっくりと家の門を出てゆく
その姿に、この十数年の記憶がどっと溢れてきた。
いろいろなことがあった。本当に。
『わっしょい!!!』
杏寿郎さんならきっとこう言うかしらと、思わず笑みがこぼれる。




そんなことを考えていたものだから、不意に隣に現れた炎色に一瞬どきりとした。

「馬子にも衣装だな」

「こら楓寿郎」


正装に身を包む楓寿郎と、今日は千寿郎くんも来てくれていた。
懐かしい面影が重なって、なんだかとても不思議な気持ちだ。


「杏火ちゃんは元々美人さんですが、今日は特別に綺麗ですね。
それにしても、晴れてよかった」

「ええ」


見上げた頬に雫が落ちた。

ぽつ、ぽつぽつ、ぽつ、さぁぁぁぁ



「あら…狐の嫁入り」

「泣いてるんでしょうか」

「父上は泣きませんよ」

「兄上が、なんて言ってませんよ」

「愛娘の門出よ。笑って送ってもらわなきゃ困るわ」


そんなやりとりをしている間にも、日中(ひなか)の空にさらに雨は強くなる

ゆっくりと歩みを進める一行に降る雨は陽光に輝き、まるで光の粒が祝福しているようだった。










笑顔 泣き顔 映るは心
はらりと伝うは誰の雫か

きっと、泣いてる、笑ってる。

時も雫も流るるままに
織りなす仕合わせ あなたと共に

あるはれの日の、あめのお話。







【泣き笑いの空 終】



/ 59ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp