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悪魔様の言うとおり

第1章 意地悪悪魔さま


「朧、俺は……」


朧を失いたくない。


「ルゥが朧を想ってくれるように、朧もルゥが弱っていくの見たくないよ」

そ、と。
ルシエルの右手を握る。

「朧を喰って。あなたは王族だよ。朧を喰って、早くもといた場所へ戻って」
「嫌だ」
「ルゥ」
「俺は、消えたっていい。朧がいない世界ならないのと同じなんだ」
「ルゥ、愛してる」


握った右手に、キスをして。
朧はゆっくりと目を閉じた。



「お願い、朧を苦しみから解放して」


「………っ」






苦しくて。
辛くて。
呼吸器がないと自分じゃ呼吸さえ出来ない。
栄養も。
排泄さえも管理された人生。
あたしの人生は、お母さんが死んだあの6歳の時に終わっていたんだ。
ただひとつ。
苦しみの中であなたに出逢えた。
見つけた。
愛し愛された。
朧の人生は、それだけで。
生きていた甲斐があったよ。






「………朧」




ルシエルが命を吹き込まなければ。
朧の肉体は静止する。
すでに限界だった朧の肉体。
繋ぎ止めておくためには自分の命を朧に分けるしか方法がなかった。
現実世界とは別の空間。
ルシエルと朧しか存在しない世界。
ずっとずっと、このままここにいたいと思っていた。
朧とふたり。
痛みも苦しみもないこの世界で。
ただただ幸せに、生きたかったんだ。


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