第26章 こんな僕では君を掬えない
「…隊長には関係無い話やね」
「やかましい、はぐらかすな。お前、何であの夜---」
最後まで言えなかったのは、メガシオンの光に市丸と破面が包まれたからだ。舌打ちをひとつ零し、天へと上昇する市丸を見る。何ひとつ、解決していない。何ひとつ、あいつの本心を、知ることはできないまま。ギリ、と、歯を食いしばる。
「ッこの百年、俺がどんな気持ちで過ごしてたか!どんだけお前のこと思うてたか!やっと会えたんや、ちっとはお前の本心曝け出してみィや!」
叫ぶ。女々しいことを言っているなと、自分でも思う。けれど、あんまりだ。この百年間、市丸のことを考えなかった日は無い。ただ知りたかった。ただ聞きたかった。裏切りの理由を、あの夜、手を震わせて何を思っていたのかを。それだけで、俺は進めるのに。
俺の叫びも虚しく、市丸は黒膣へと消えてしまった。
「…っあのボケ、次会ったらしばき倒す!」
諦められない。どうしても、信じていたいと思う自分がいる。昔から馬鹿みたいにお人好しだったあいつが、藍染なんかに味方するはずが無いのだ。
「お前。あの金髪と知り合いなのか?」
「……随分昔に私の上司だった、それだけや」
こんな僕では君を掬えない
(平子隊長、と。百年経った今でも俺のことを隊長と呼ぶあいつの真意になんて、気付けなかった)