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徒花まみれの心臓【BLEACH】

第6章 この世界は誰にも優しくない













五番隊隊長藍染惣右介と一番隊隊長山本元柳斎重國の二重スパイ。


この極秘任務を放棄することが出来たならばどんなによかったことだろう。総隊長は藍染隊長の危険性をきちんと知っている。だからこそ、幼い頃から彼の御眼鏡に適っていた私に命じたってことも分かってる。だけど、逃げ出したくなる時がある……私はどちらにも心を置いていないから。私が心から大切だと思っているのは、乱菊だけ。その任務を受けたのだって、ついでだから。元より藍染隊長側に入り込もうとしてたから、それに大義名分ができただけで。…乱菊だけで良かったのに。大切なものが、ひとつ、またひとつと、増えていく。


藍染隊長は憎しみの対象。乱菊の魂魄を奪った憎い人であり、平子隊長をあんな目に遭わせた張本人。私は乱菊の魂魄を取り返すために、彼の申し出も総隊長の極秘任務も受けた。それから私は五番隊の第三席に就任し、平子隊長や色んな人達と出会い―――そして、平子隊長はあの日からいなくなって。藍染隊長の所為にしている節はあるが、幸せだと思えた日々を壊したのは他でもない私自身だ。だけどやはり根源は藍染隊長だから、私はより一層彼を憎むようになった。…はず、なのに。それなのに、彼をどうしてもかつてのように憎み切れないない私がいる。彼がいつからかほんの少しずつ心を開いてくれるようになり、それに従って顕わになるもの。彼が内に抱えるのは、果てしない“孤独”だった。要するに彼は寂しいのだと、理解されること、ひいては人の愛情やぬくもりに飢えているのだと気付いてしまった時には、私には彼を心の底から憎み続けることなんて出来なくなってしまっていた。―――愛おしく思ってしまった。


藍染隊長に憎しみの念を抱いたままでいられたらよかったのにと思ったことは数え切れないくらいある。彼の孤独を知らないままでいられたらよかったのに。知らないままでいられたら、こんなに苦しまなくて済むのに。


「………、」


「やあ、起きたかい」


「っ! 藍染隊長……なんで、?」


ふと、頭を撫でられている気配がして、意識が浮上する。私を見下ろしていたのは、まさに頭を悩ませているこの人で。


「此処は四番隊だ。君は檜佐木副隊長に運ばれてきたらしい。一体どうした、君という者が珍しいな」


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