第9章 西国見聞録
夜中、
背中に瑠璃の寝息が聞こえる。
光秀は港の上に浮かぶ月を眺めていた。
視線を振り、町を見渡せば、
寝静まった街中を歩く、黒い影。
(こんな刻に……)
盗賊か酔い人か…。
光秀は出掛けに久兵衛の耳打ちの台詞を思い出していた。
『毛利が堺に入港している模様です。
少数だそうです』
(毛利元就…)
光秀はスルリと立ち上がると、
音もなく部屋を出て行った。
「…ん……」
フッと目を覚ました瑠璃。
(光秀さま…何処へ…夜のひとり歩きは……よくな…い……)
光秀がいない事に驚きもせず、
瑠璃はまたすぐ、眠りに落ちた。