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私が死のうと思ったのは【ヒロアカ夢】

第18章 ディスクアイエット



今まで轟くんはきっと色々なことを抱えて、背負って、辛かったんだろう。だけど今の彼はどこかすっきりした様子で、まっすぐな瞳をしている。

自分たちのおかげ、と彼は言ったけれど実際のところ私がしたことと言えばただ自分の考えを言ったまで。結局行動を起こして変化を受け入れたのは轟本人であって、私も緑谷も彼の背中を少し押しただけだ。

(すごいな…みんな、どんどんヒーローに近づいていって)

ふとそんなことを思えば、胸の奥にまた小さなシコリを感じる。

自分は、みんなのように変われているのだろうか。

それとも。

「少し気になってたんだが…」

『え?』

「お前はどうしてヒーローになりたいんだ」

『え…?』

何気ない彼の問いかけが、また私の胸にズキリと突き刺さる。

今までこういう質問をされたことがないわけではないが、あまり盛り上がる話題でもないため、いつもなんとなく流していた。

『…小さい時から、憧れてて…それで…』

そのまま言葉を濁せば、彼のオッドアイの瞳がまっすぐこちらを見ているのに気づき思わずハッとなる。

人に言いにくいことを聞いておいて、心を掻き乱しておいて、自分のことになると、いつも誤魔化す。

このまま私は自分だけ何事もないかのように、逃げるのか?

(お前はいつも逃げてばかりだ、

だからお前にはなにもできない)

世界で一番嫌いな男の声の言葉が頭の中に響く。

だめだ、絶対に。

そう自分に唱えれば、意を決して長い沈黙のあとやっと重い口を開いた。

『…弟がね、いたんだけど。よく小さい時一緒にヒーローごっこしてたんだ』

この事を人に話すのは初めてで、手が少し震え始めるのに気づく。轟もそれに気づいたのか察して、何も言わずにただ無言で待ってくれた。

『弟は父と同じ無個性だった…それでも弟、ツバサはヒーローに憧れ続けたんだ。私と一緒にヒーローになるんだって、二人でチームを組んでトップになるんだって…いつも言ってた』

「…」

『でも、結局それは叶う事なく…ツバサは、し、しんじゃった…んだ』


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