第18章 ディスクアイエット
◇◇
『ん…』
「…起きたかい?」
『あれ…』
目を開ければ見慣れた真っ白な天井に、ひょっこりと現れたリカバリーガール。
「あの子も大概だけど…アンタも結構無茶な戦い方するねぇ…」
頭に置かれていたタオルをどければ、ゆっくりと上半身を上げる。
どうやらいつの間にか保健室に運ばれてきたようだ。
(そっか轟くんとの試合で負けて…ここに)
未だに体が少し冷えている事に気づき、おぼろげな記憶をたどる。
確か緑谷と轟の試合を見てからというもの、寒気と異様な感覚に襲われ人がいない場所へと逃げた。
その後も落ち着かない鼓動と気分の悪さを誤魔化すように淡々と準決勝まで行ったけれど、最後は轟くんにあえなく敗退。
正直試合最中もずっと嫌な感覚と冷や汗が止まらず、まともに戦える状態じゃなかったけれどそれでもなんとか精一杯やって。
最後に見た轟くんの炎に急に体のスイッチが切れたかと思えば、そこで意識を失った。
(あれ…でももうそこまで気分は悪くはないな…)
個性の副作用からの頭痛と吐き気は未だ残るものの、先ほどまでの異様な感覚からはもうすでに解放されているようだった。
ホッと胸をなでおろせば、またゆっくりとベッドに横になった。
「ほら、これから表彰式だよ。行かなくていいのかい」
『…誰が勝ったんです?』
「確かあの爆発の…爆豪って子だったね」
『…轟くん負けたのか…炎使ってましたか?轟くん』
「アンタそんなに気になるなら自分で行ってらっしゃいな」
『もう少しここにいたい…いいですか』
「ったく、しょうがない子さね…」
リカバリーガールに甘えれば、また静かに目を閉じる。
確かに表彰式は見たいしみんなが気になると言えばそうだが、どうしても今は一人になりたい気分だった。
今日起こった様々な事を頭の中で巡れば、次第と眠気に襲われる。そのまま身を任せればすぐさま意識は遠のき、また深い眠りへと落ちて行った。