第9章 ➖ミノカサゴ卒業➖
『お待たせ致しました…如何でしょうか?』
ドレスを着た事により身が引き締まり
接客モードへと入る私…
誰に視線を合わす訳でもなくそう問いかけるも
何の返答も無く数分が経過した…
痺れを切らしアズールを見つめると
視線が合うと
漸く彼が口を開く
「……ま、孫にも衣装とはこの事ですね…
僕の見立ては間違っていなかった…」
少し上擦った声を上げたかと思えば…
いつもの口調へと戻り
眼鏡をクイッと上げる
アズールが口を開いた事を皮切りに…
双子も口を開く…
「ほぉ…随分と……見違えましたね」
「アハっ…ミノカサゴちゃん…
ちょーいいじゃん!ギューってしていい?」
と、言ったのも束の間
返答する前に正面から抱き締められ
彼の胸の中に収まる私…
『え?…あ?…ねぇ…ちょっと…離して…』
思い掛けぬ行動に
思わず素の反応をしてしまう…
彼から離れようと身を捩るが
抜け出そうにも力では敵うはずもなく
諦めて大人しくなる私…
「えぇ?…なんで?ヤダ!
オレが飽きるまで離さない。だから〜…
諦めてオレにギュッとされてて♡」
声を弾ませて
そう言う垂れ目の片割れ…
『……』
彼に何を言ってもダメなんだろうなぁ…
そう思い静かに彼等のやり取りを聞いていた
「ふふっ…貴方は本当に面白い人だ…
アズールをこんなにも……させるとは…」
抱き締められているので
一部聞き取る事が出来ない部分もあったが…
つり目の片割れの言葉から
彼の珍しい反応でも見れたのだろうと
予想できた