第8章 ➖新たな日常と契約➖
『それに…この契約出来ないと
私を監視下に置けないわよ?
弱味なんて握れないわねぇ〜』
目を細め不敵に微笑むと
一瞬ビクッとする彼…
(あぁ…やっぱり図星ね…
顔に出やすい所は昔から変わらないのね…
それに君が考えそうな事なんて何となく
わかるよ。わかるのにな……)
暫しの沈黙が訪れ苦悩する表情を時折見せる彼
漸く答えが出た様で口を開く
「わかりました…
ですが、私の契約無しにどうするんです?」
5円玉を3枚取り出し机へ並べる…
『そりゃコレに魔法を…』
-パチン -
指を鳴らしコインに転移魔法の術を施す
『君達がコレを身につけててくれれば
私に何かあったら自動で発動するよ』
君へとコインを手渡す…
「あなた…何故そんな上級魔法を…
それに…魔法陣も詠唱も無く…何者……」
『それ以上聞くと見返り要求するよ?』
そう言うと目を一瞬見開き
直ぐに表情を元に戻し
君は黙って俯いた…
「わかりました…では、明日の昼食後に
ラウンジ迄お越し下さい…
彼等には私から話をしておきますので…
今日同様…2人を迎えに寄越しますので」
『明日の昼食後ね…はぁ…もう戻っても?』
「えぇ…話しは以上ですのでどうぞ…」
転移魔法を使おうとしたが…
あの時の別れが脳裏を過り
躊躇してしまった…
また…会えなくなるのでは…
そんな不安に襲われる…
背を向け自らの足で扉へと歩みを進め
ドアノブに手を掛けて開ける
去り際にチラリと彼の方を向き口を開く
『あ、アズール…初日はごめんなさい。
と、コレは式典を無断欠席した分』
そう言って彼にコインを投げ
そのまま部屋を後にした…
彼と距離を取るためには
嫌われるのが最善だとわかっていても
どこかで彼に好かれたい
そう思ってしまったのかもしれない
思わず出てしまった謝罪の言葉…
(この気持ちに気付かないで…お願い…)
その事だけを願い
歩みを進め教室へと戻る
その後は…滞りなく過ぎていき
この日を終えたのだった…