第5章 跋―振り駒狂い—
身体が跳ねるのを見ると心地よくなってくれているのが分かり、喉が大袈裟に上下するのも謙信の欲情が手に取るように丸分かりで、もっと気持ちよくしてあげたくなる。
謙信の手がの肩、首を撫で、胸の合わせを早急な手つきで割り開き、熱い手が肌に触れる。
互いに触れ合い、口づけをやめずにいると朦朧としてくる。
「……好きな人を自分の物にするのは、気分が良い事ですね」
呼吸を乱しながら囁き、謙信の首筋を軽く噛んで吸い上げる。
「お前、そんな場所にっ……」
「この間、同じ場所にしたでしょう?」
くすくすと笑ってもう一度同じ場所に吸い付くと、濃い鬱血痕が小さく残り、はひどく満たされる。
「……どう言い訳させる気だ……」
眉をひそめ、欲望の焔を目に宿す謙信の声は余裕が無い。
「言い訳など要らないでしょう?私に愛されたと言えば良いじゃないですか」
同じ事を言い返すと謙信はますます不満な顔になるが、怒っているのでも嫌がっているのでもなく、焦れているのだとはっきり分かる。
「……もう、堪えられぬ」
切羽詰まった表情で言われ、も同じ気持ちだと思うが、途端に気まずい事に気付く。
「……あの」
「なんだ?これ以上焦らすなら俺も完全に理性を失うぞ」
凄まれても仕方がないと申し訳なくなる。
「いえ、私も同じ気持ちで一杯なのですが……」
「素直に認めるなら早く繋がせろ」
急いた謙信がの後頭部を掴んで力任せに抱き寄せ、激しく口づける。
「んっ……あのっ……!」
少し唇が離れた合間に恥を忍んで謙信に訴える。
「どうした?焦らされている俺にこれ以上の苦痛を強いるのか?」
強く見つめ返され、は大きく首を振る。
「あ、あの、私、……謙信様を、その、迎え入れる準備の仕方が分からないことに……今、気づきました……」
「なに……?」
意味が分からず怪訝な顔をする。
「ですから、私も……、早く……したいのですが、いきなりは……無理、なので……」
おずおずと、硬く張り詰めた謙信の熱を軽く押さえ、意図を伝えようと顔を赤くするに謙信ははたと気づき、途端に表情を崩した。
「馬鹿者。本当に計画性が無いな」
「……すみません。でも、正直に言ったので、許してください……」
真っ赤になり、目を潤ませているを今度はあやすように抱きしめる。