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【イケメン戦国】徒然後日譚―短編集—

第5章 跋―振り駒狂い—


そしてが好意で望む事なら謙信は断らない。

「俺をまるごと捧げてやる」という言葉を実践し、それを厭う様子もない。
むしろ嬉しそうに応えてくれる。

「お前が出来るのか?」
呆れた声には「どうせ戯れに少し試してみたいだけだろう」という子供の駄々に付き合う妥協の響きが滲んでいる。
しかしも無知ではない。
数えきれないほど身体を重ねれば謙信の抱き方で、どうすれば相手が気持ちよくなるのかくらいは察しが付く。
は悪戯っぽく笑い、「出来るかどうか試してみたいんです」と言う。

普段と違う眺めで見下ろされると謙信は少し戸惑う。
二人で寝転がる事はあるが、に「今から触れますよ」という意図を告げられて上に乗られたことは無かった。
どことなく居心地が悪く、認めたくない不安と気恥ずかしさがある。
何か言おうとするとの顔が近付き、唇が重ねられた。
胸の上に置かれた両手のやわらかな感触が意味ありげに首へ上がり、指先で耳や首筋を撫でられる。
しかしその感触に意識が行く間に唇を小さな舌で舐められ、不覚にも驚いてしまう。
も謙信の戸惑う姿が新鮮で、つい愉しくなる。
愛したい気持ちを込めて指先で肌を撫でると身体が揺れ、唇を重ねると漏れる吐息に背筋が疼くのだ。

「……ふふっ、なんだか、謙信様の気持ちが分かった気がします」
思わず笑い、照れ隠しに睨むように見つめ返す謙信には軽く口づける。
「んっ……、そう急くな」
「謙信様はいつも、もっと急いてますよ。けれど、謙信様が「可愛い」と言うのが分かりました」
「……?」
「好きな人に触れて、その触れた肌が心地良さそうだと嬉しいですね。謙信様がとても愛しくて可愛く思えます」
謙信は不貞腐れたような顔で「可愛いなどという言葉を男に使うな」と文句を言う。
は笑ったまま口づけを繰り返す。
着物の前を少し開け、じかに触れる肌に手を当てると、その温もりが心地よく、もっと触れたいと思う。
「……口を開けてください」
が口づけながら言うと、反射的に言うなりに唇を開けた謙信の口の中に舌先を挿しこむ。
戸惑う謙信の手がの背をさすり、触れている皮膚が熱くなり始めているのが分かる。
「舌を出してください」
甘く囁くと、迷いながらも謙信が従う。
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