【ハイキュー!!】排球人生死愛箱【ハッピーシュガーライフ】
第14章 伝書鳩は全てを見ていた
「は……」
なん、なんなんだよこれ。
言葉を失って、声が出なかった。頭が真っ白で何も考えられない。一週間ぶりの大好きな人からの手紙だからというからそりゃ嬉しく手紙を開いたものの、その内容はあまりにも簡潔で呼吸がしずらくなるのも無理はない。
引越しなんて話は手紙に書いてあるように一度も聞いたことがなかった。話そうとしていたことも、見たところではなかった。いや、もしかしてずっと前から言おうとしていた?でも手紙では"急な引越し"と書かれてある。最近忙しかったのはそのせいなのかもしれない。だとしても、一体どうして。
俺が困惑する理由は、引越し以外にもある。もし仮に、いや、引越ししたとしても連絡先や住所は教える筈だ。なのに手紙の内容は連絡先のれの字もない。
これが、本当の別れだとしたら?なんなんだよ、"会えないと思うと寂しくなります。"って。もう会えない前提の話になってんじゃねーか。
彼奴はもしかして、初めから教える気は更々無かったって事か?……いや、そんな疑う行為なんてしたくない。……でもこれは明らか過ぎる。
#れいか#が何を考えているのかは分からない。いや、昔からそうだった。ずっと優しくて可愛くて、そんな#れいか#だけど本性や弱み。そんなもの、なかなか掴み取る事は出来なかった。
「クロ……っ!」
バタバタと忙しい足音を鳴らして俺の前にやってきた研磨の手には手紙が握られていた。よくよく研磨を見ると泣いていて、申し訳ないがお前を慰める余裕は俺には無い。研磨の握っている手紙を見れば、自分のものと全く同じ内容だった。違うのは名前だけ。少し達筆で大人も負けるような綺麗な字が何故か消えていきそうだった。
研磨は足に力が無くなったのか、とうとう膝が地に着き、顔を覆って嗚咽の声を漏らし始めた。
ただ俺はこれが草々不一な物だと願うしかなくてただ立ち尽くすだけだった。
***
「本当に宜しかったんですか?知人に最後の挨拶をしなくて」
《皆様こんにちは。今日も日本航空3232便をご利用下さいましてありがとうございます。皆様のお手荷物は上の棚などしっかりと固定される場所…──》
飛行機内の中、アナウンスとともに鏡の声が聞こえる。
『……はい、大丈夫です』
無表情のまま、#れいか#は外を眺めた。太陽は出ておらず、雲で隠されており通常より暗いと感じさせた。
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