第2章 私が貴方を好きになる迄の話。
□決意
「こんにちは、カナエさん。」
ココは鬼殺隊の集合墓地だ。
「しのぶも恋をしたら変わるんですかね?」
カナエさんの墓石に水をかけながら
私は静かに問いかけた。
しのぶに会った後、
ココに来るのは私の決まり事なんだ。
「…生きたいって…思って欲しいなぁ。」
しのぶはきっと変わらないだろう。
その気持ちは呼吸が苦しくなるくらいに分かる。
私はそれに寄り添うけれど、心の奥は少し違う。
「カナエさん…っ…ごめんなさい…っ…。」
最近は特にそうだ。
私は、自分の命が惜しいと
玄弥君に出会ってから少しだけそう思う。
彼を守りたい、生きて2人で歩いてみたい。
そんな後ろめたい願望がじわじわと私を追い詰めていた。
「私だけ…っ…ごめんなさいっ。」
しのぶは『良いよ。』と笑うけれど、
カナエさんはこんな情けない私をどう思うのだろうか。
私ばかり、生きたいと
前を向いているのが無性にやるせなくて。
まるでカナエさんを失った事への無念を
私は忘れたかのようで。
私は墓石に額を付けて自分の為に情けない謝罪をした。
今だけは、この酷く後ろ向きな自分を許してくれ。
と声を殺して泣いている私に大きな影がかかる。