第5章 伍.来世に繋ぐ物 ※
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「胡蝶、大丈夫そうか?」
「冨岡さん、ありがとうございます」
あれから数日で俺と冨岡は早々に退院し、その次に伊黒、甘露寺、時透、玄弥が退院した。
悲鳴嶼さんは片足を補う器具をつけ、慣れるために蝶屋敷で回復訓練をし、ついこの間退院。
我妻と猪頭も退院したが、竈門と胡蝶、胡蝶の継子とはまだ退院出来ていないまま一ヶ月が経ったところだ。
そして今日胡蝶とが退院し、柱と元柱合わせて産屋敷へ行くために皆揃って迎えにきたのだった。
「いやァァァァァアアア!!!!!」
の姿が見えないと思っていたそばから、外でらしき人物の大きな声が聞こえる。
何事かと思い皆が思わず構え、俺と宇髄が急いで声のした廊下へ飛び出た。
そこで見たものは、立ったまま気を失いそうなと、綺麗な羽織りを着ているその肩についているなかなか大きなセミがミーンミーンと鳴いていた。
「たすげでくださ…」
「……セミごときでそんなんなっちゃうの?」
「ビビらすんじゃねェ…」
に近付きセミを取ろうとすると、は「本当にお願い飛ばしたりしないでお願いします」と半分泣きながらセミと俺を交互に見ている。
うるうるした目でこちらを見られるのは少々参る。可愛い。
ブゥゥンと大きな羽音を立て、無情にも飛び立つセミ。
その瞬間「ヒッッッ」と声にならない声を上げては固まった。
「、大丈夫か?何事だ?」
「大丈夫、なんでもねぇわ」
「ちゃんどうしたの…?」
心配して次々と部屋から顔を出す皆。
絶句し固まっている様子のを見て心配しているが、カタカタと口を震わせ「ここに、大きい、セミが、ブゥゥンって」と自分で説明するとクスクスと笑い声が聞こえた。
「わたしは世界で一番虫が嫌いなんです……無理です……笑わないでください」
「はいはい、怖かったなァ。
飛ばしちまって悪かったよ」
頭をぽんぽんと撫でてやると、その腕を掴んで降ろし自らの腕を組ませてムスッとした顔をした。
腕を組んで密着した状態で拗ねているのだ。可愛いやつ。
「うむ!仲良しで結構だな!行こうか!」