第2章 弐.尊い命
翌日夕方頃、と煉獄が任務へ向かったと屋敷の隠から伝言があった。
俺は俺で任務に行かなきゃならねェ。
宇髄も何やら次の任務に向けて準備しているようだし、最近は鬼の動きも活発になってきている。
竈門炭治郎とその鬼……。
あいつらのことを鬼舞辻無惨が探している可能性があるということだ。
あの鬼が特別なのはよく分かった。
俺の稀血でさえ食いつかなかったくらいだからな。
本当に腹が立つクソ共…。
「あら?不死川さんもこれから任務ですか?」
「あァ」
「鬼舞辻無惨の足取りを探すとか…そんな任務でしたよね?
気をつけてくださいね」
産屋敷へ顔を出すと、胡蝶が笑顔で見送ってくれる。
今日は冨岡のクソ野郎はいねぇのか。
「さんと煉獄さんなら、その後を追って竈門炭治郎くんたちも一緒に行きましたよ」
「なんだとォ?」
「あの子たちは優秀です。
だから皆無事で帰ってくると思います」
「つくづく気に食わねェ…」
「まぁまぁそう言わずに仲良くしましょうよ」
「じゃあな」
「あらあら…」
つーかはで仲良くやってんのか?
全然想像できねェ……。
仲良くしてるフリしていじめるとかそんな陰湿なやつでもねぇが。
今度胡蝶にでも聞いてみっか……。
任務の現場付近に着き、今回の任務の指示に従い偵察を進める。
俺は鬼をぶち殺す任務の方が性にあっているが、今は宇髄が他の任務に当たることが厳しいらしく、代わりに偵察だ。
俺は宇髄のようにこういう任務をこなせる自信はねぇがやるしかねぇ。
鬼が来たら斬ればいい話だしな。
そこで人の足のような跡を見つける。
……なんだァ? こんな森に人の足跡…?
だがそこの片足分の一つだけしか辺りは見つけられなかった。
人と何ら変わらない姿の鬼はそりゃいるが、この足跡はなんとなく引っかかる。
足跡の残し方を見る限り、この辺りを彷徨いていたわけではなさそうだ。
とにかくもう少し探索してみるか……。
そうしてまた一つ足跡を見つけ、二つ目があった場所から更に真っ直ぐ慎重に見ていく。
どうやらこの方角に進んでいるようだ。