第1章 花信風 滝澤 /平子
丈さん行きつけの小洒落た立ち飲み屋に行き、少し強めのお酒を飲んだ。
数日後に訪れる闘いの日が近付き最近寝れていない。
「、寝れてないんだろ」
「…丈さん鋭過ぎて怖い」
「顔色が悪すぎる」
「……いつも、規模が大きな闘いが近付くと堪らなく怖くなるんです…、また前みたいな事が起きたらどうしようって、また周りのみんなが…とか」
「…信じろ」
「はい、でも、丈さん…、私丈さんがいなくなったら…」
「俺はお前の前からいなくならない」
「…絶対?」
「ああ」
「ふふ、丈さんと話すとなんか、すごくほっとする…なんでだろ」
何故かツーっと一滴、涙が零れた。
丈さんは私の涙を親指で拭ってくれた。
「とりあえず出るか」
「…はい」
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2人で歩く、丈さんはほろ酔いの私の腰を支えて歩いてくれてる。
なんでこうも安心してしまうんだろう。
政道さんがいなくなった日からぽっかりと心に空いたその穴は、私の感情を全て無にした。
でも、丈さんと出会ってから少しずつ少しずつ、自分の中の感情が蘇ってきている。
「丈さんといると、なんか弱くなっちゃうんですよね…」
「お前は弱くなれる場所が必要だろ」
「強くありたいのにですか?」
「鈴屋班の母と呼ばれてるのを聞くし、戦闘時は最近俺に似てきてるらしいぞ、お前」
「…母は否めない部分はあるかも…、でも丈さんに似てきたは褒め言葉ですね!」
丈さんの顔を見上げると、丈さんも私を見てて目が合った。
その瞬間よろけた私を丈さんがまたぐっと引き寄せてくれて、思いの外顔が近くになった。