第10章 2人の秘密基地
シャワーを浴びいつもの服に着替えると、オレは「お疲れ」と仲間に軽くあいさつをし、ロッカールームをさっさと出て行く。
早くサクに会いたかった。
会って、誕生日を祝って喜ぶ顔が見たい。
サクの笑顔を思い出し自然と顔が緩んでしまう。
はやる気持ちを抑えて廊下を歩いていると、前からテンゾウが歩いてきた。
「あ、先輩。
お疲れ様です」
「お疲れ。
あー、テンゾウ、あれありがとね」
「今日ですか」
テンゾウが微かに微笑みを見せる。
「ん。今から行ってくる。
あ、オレらがそうなったこと、みんなには秘密にしといてね。
ややこしくなるの嫌だから」
「わかってます。
サクさん待ってるんじゃないですか?
早く行ってあげてください」
物分かりのいい後輩で助かる。
恋人だとバレたら、オレたちはきっと同じ班じゃいられなくなる。
それじゃ近くで守れないからバレては困るのだ。
「うん。
じゃね」
「先輩とサクさん、か。
ちょっと意外だな」
短く手を上げ、去っていくカカシの後ろ姿を見ながら呟いたテンゾウの言葉は、誰もいない廊下に吸い込まれていった。
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サクの家のチャイムを鳴らすと、すぐにサクが出てきた。
「先輩、お疲れ様です!」
満面の笑顔で出迎てくれたサクを今すぐ抱きしめたい衝動を堪えて「うん」と短く答え、サクを連れ出す。
「先輩、どこに行くんですか?」
ここは里から程近い森の中。
サクには行きたい場所がある、とだけ告げていた。
不思議そうに聞くサクの手を掴んで握ると、「着くまで秘密」と反対の手の人差し指を立て、また歩き出す。
オレの顔と繋いだ手を交互に見つめながら顔を染めるウブなサクが可愛い。
指を絡めて繋ぎ直すと、オレはさらに森の奥に向かって歩き出した。
しばらく行き、大きな樫の木の前で止まる。
大人5人が腕を広げてやっと囲えそうな太い幹。
寒くてもたくさんの葉をつけた立派な枝。
いったい樹齢何年だろうか。
そのゴツゴツとした木の幹に触れ、何層にも重なる濃い緑の葉を茂らせる立派な枝の連なりを見上げる。