第23章 キセキ
「ゴメンカカシ!
先寝てね」
「んーー。
もうちょっとこのままでいさせて」
カカシがそう言って、わたしの肩にもたれたまま目を閉じる。
カカシと話すのは久しぶりだし、すごく嬉しいな……
「うん……」
しばらく心地よい沈黙が続く。
「サク、迎えにいった日、星に何願ってたの?」
カカシが眠そうな声で尋ねる。
「みんなの無事を願おうとしたらカカシが来たから、何も……」
「そっか……」
次の言葉を口にしかけて、カカシが一度躊躇うように口を閉じる。
でもすぐにまた口を開いた。
「オレは、初めて願った。
今まで叶わないって決めつけて、何かを願ったことなんてなかったのにね。」
「何を……、願ったの?」
「少し見ないうちにサクの腹がすごく大きくなってて、あー、もうすぐ産まれてくるんだって急に実感が湧いてさ。
無事に元気に生まれてきますようにって……。
あと、サクも安産でありますようにって、願った……」
あの時、そんなことを願ってくれてたの……?
あの時はカカシに会えて嬉しくて、泣いてしまってて、カカシが何を思っているかなんて考える余裕がなかった。
戦いのダメージが残った体で、無理を押してわたしを迎えにきてくれた。
そんなときに、わたしたちのために願ってくれたんだ。
嬉しくてカカシを見ると、カカシもわたしを見つめていた。
目が合うと、授乳を終えてゲップをさせる為に縦向きに抱っこしたリュウセイごと、柔らかく抱き寄せられる。
「オレと家族になってくれて、ありがとう……
サク、愛してる」
カカシが顔をゆっくり近づけて、触れるだけのキスをする。
「ん、わたしも愛してる……」
唇が離れ、そう返事をして、もう一度唇を重ねようと顔を近づけたそのとき、「げー」と、リュウセイが大人顔負けの立派なゲップをした。
その音にビックリしたわたしたちは、一瞬パチクリと目を見合わせ、そしてリュウセイが起きないように、声を殺して笑った。
愛する人と一緒にいて、一緒に笑い合える。
それは決して当たり前ではない。
この奇跡に感謝しながら、わたしは愛する人の胸の中で、そっと目を閉じ眠りについた。
fin.