第5章 看病のキス
「お、おう!」
料理が来たことで話題が逸れてホッとする。
みんなの近況や最近あったおもしろいこと。
昔と変わらない久しぶりの空気を感じ、楽しいが、同時にそこにオビトやリンがいないことを感じ、どうしても胸を寂しさが覆う。
みんなと別れてから、オビトやリンの墓に向かう。
花屋はもう閉まっていたから適当に花を積んでいると、「カカシ。」と聞き慣れた声で呼ばれる。
「なに……?ガイ」
ヘルメットのような髪を揺らして立っているガイを、目の端に捕らえる。
「オビトと、リンにか?」
「……ああ」
「一緒に行ってもいいか?」
「……ダメって言ってもどうせ来るんでしょ」
「はは。さすが我がライバル。
よくわかったな」
笑っているが、いつもよりも静かな口調のガイに心配をかけてしまったことを悟る。
だからってどうしようもないのだが……
2人連れ立ってそれぞれの墓に花を供える。
しばらくじっと佇んでいたが、ガイが不意に口を開く。
「オレは、お前に幸せになって欲しいと思っている」
優しい声だった。
「オビトやリン、ミナト先生だって、きっとそう思ってると思うぞ」
「……」
「オレが言いたいのはそれだけだ。
じゃ、オレは行くけどお前はどうする?」
「もうちょっとだけ、ここにいるよ」
「……そうか。
冷える前に帰れよ。
明日も任務なんだろ」
「うん」
「じゃあな」
立ち去るその背中に声をかける。
「ガイ、ありがとね……」
「おう」
ガイの気配が消え、北風の吹き抜ける丘に1人立ち尽くす。
目を瞑ると、サクの笑顔が浮かび会いたいと思った。
それと同時に会いたくないとも思う。
サクを愛しいと思えば思うほど、失う怖さも増していく。
オレは俯いて、何かを堪えるように奥歯をぐっと噛んだ。
ガイとの約束は守れそうもなかった。
オレはすでに、足先が凍えてもここから動けないと確信していた。
冷たい風には微かに雪が混じっていた。