第4章 二人きりのお祭り
木陰のベンチに見知った後ろ姿を見つけて近づく。
少し癖のある、見慣れたフワフワの短い金髪が風になびいていた。
「サク」
声をかけるが返事がない。
近づくと、すー、すー、と規則正しい寝息が聞こえる。
呆れた…。
コイツ、寝てる。
ほんと自由人……
サクは、ベンチの横の木の幹にもたれて眠っている。
起こそうとも思ったが、昨夜は遅くまで任務だったみたいだし、あまりにも気持ちよさそうだからそのままにしておく。
なんとなく隣に腰掛ける。
だって、あまりに無防備だし。
一応女だし…。
変な言い訳を考えてしまっている自分にハッとなる。
何やってんだ、オレは……。
はぁ、とため息がもれる。
最近変だ。
サクを妙に意識してしまっている気がする。
いつも先輩、先輩と子犬みたいに纏わりついてくるコイツが最初こそ鬱陶しかったが、最近ではそれが当たり前になり、向こうが任務などでしばらく見ないと寂しさすら感じるようになっていた。
チラリと横顔を伺うと、サクがへら、と笑い「カカシ先輩…、好き…。」と呟いた。
思わずベンチから落ちそうになり、慌てて踏みとどまる。
好きって言った?
あ、あれか?
いわゆる男女のアレじゃなくて、先輩、後輩の好きってことでしょ。
色恋沙汰なんて無関係で、今までそんな浮いた話なんて聞いたこともないサクだ。
でもなんとなく居心地が悪くなり、サクの鼻をつまむ。
「ふがっ!」
色気ゼロの声を出して、サクが薄目を開ける。
「こんなとこで寝るなよ。」
サクの体がビクリと跳ねて、大きな目がパチリと開く。
「わ、あ、カカシ先輩!?
わたし、寝てました?」
「そうだよ。
女が無防備に外で寝ちゃダメでしょ。」
「す、すいません。
あまりにここが気持ち良くて…。」
サクが大きく伸びをして背をそらし、あくびをする。
「ほら、家帰って寝ろよ。
今日は非番だろ。」
「はい、そうします。
先輩はどうしてここに?」
「サクの後ろ姿が見えたから」
「わざわざ来てくれたんですか?」
嬉しそうなサクに、なんだか恥ずかしくなる。