第2章 IFストーリー 蝶と嘘つき狐 【注意:悲恋要素あり】
家康はしのぶを横目で睨みながら呟いた。
「…そう聞こえたのなら、そうなのでは?」
「…はぁ?…喧嘩売ってんの?」
「まさか、そんなことする訳無いじゃないですか。」
しのぶがニコニコと微笑みながら言うと家康はボソリと呟いた。
「…(ボソッ)本当に胡散臭い女。」
「…はい?(ニコッ)」
黒い笑みを浮かべるしのぶと面倒くさそうな顔をする家康を何とか政宗が宥めてこの場は収まった。そうして、三人揃って大広間に着いた。
「…姫様、失礼致します。」
そう言って、去ろうとする陽と家康の視線が交わった。だが、家康によって直ぐに逸らされ、彼は陽に向かって言った。
「…さっさと、退いて。…邪魔。」
冷たく言い放つ家康に陽は辛そうな顔をしながら、消えるような声で呟く。
「…申し訳ありません、家康さま。失礼致します…。」
そう言うと陽は直ぐにその場を去ってしまった。それを見ていたしのぶが家康に言った。
「…前から思っていましたが、陽にきつく当たり過ぎでは?…もうちょっと、朗らかに接する事が出来ないんですか?」
「…あんたには関係ないから。」
そう呟くと家康は一人で大広間の席に行ってしまった。それを見ていたしのぶと政宗は顔を見合わせ溜息を付いた。そして、二人も席につく。
「…光秀、貴様が探りを入れておるあの女は何か口にしたか?」
信長は光秀の方を向いて話し出した。それに応えるように、彼は話した。
「はっ、どうやら今晩に決行するようです…。如何なさいますか、親方様?」
光秀は自分の調べた情報を淡々と述べた。それを見ていた、秀吉は苦虫を潰した様な顔になる。
「…光秀、お前いい加減にあれは辞めろと…。」
「…秀吉、織田軍の情報収集のためだ。致し方なかろう。」
光秀はそれについては秀吉とは話す気は無いと態度で表していた。それを見て、秀吉は攻める気にはなれなかった。
「…苦労を掛ける、光秀。」
信長は光秀に無表情で話しながらも、何処か苦しそうな瞳を向けていた。
「とんでもないです、…これも全て、織田軍の為ですから。………それと、もうそろそろ約束の時間なので失礼します。」
「…っ、光秀!」
秀吉の静止を無視して光秀は大広間から出て行った。しのぶは光秀が去った場所を見つめながら呟いた。
「…(ボソッ)まだ、香の匂いが取れてないですね。」
