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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第4章 那田蜘蛛山


翌朝四人は屋敷を出発した。

「お世話になりました」

炭治郎がお礼を言って、切り火をしてもらう。
切り火を知らない伊之助が暴れ出したので、慌てて皆で止める。

別れ際、光希がお婆さんに声をかけた。

「また近くで仕事があった際にはお礼に寄らせていただきます」
「それはそれは。お待ちしております。『必ず』またお越しくださいませ」

お婆さんはそう言って微笑んだ。

「……はい、必ず」

『生きて帰れ』という意味を汲み取り、光希は深く一礼した。

そして四人は那田蜘蛛山に向かって走り出した。



山の入り口に差し掛かると、善逸が座り込んだ。
進行方向からはとてつもなく嫌な気配がする。
善逸が怖じ気づくのもわからなくもない。

目に涙を溜めて「怖いんだ!」と至極真っ当な事を言う。

炭治郎が匂いで感知した先には鬼殺隊員。
悲壮な声を上げて、異様な感じで空を飛び、山へ消えた。

言葉を失う新入り四人。
男を飲み込んだ山は不気味にざわめいている。


「……俺は、行く」
沈黙を破ったのは炭治郎。

「俺が先に行く!!」
と伊之助も張り合う様に前に出る。
それを見て、炭治郎の緊張がすこし溶けたようだ。

光希は善逸に「お前はここにいろ」と囁いて二人の隣に行く。
「俺も行く。かましてやろうぜ」

炭治郎が頷く。


三人が山へ走り出すと、
「ちょっと、待て!」と善逸が震えながら叫んで皆を止めた。

「光希は、俺と行くんだ!」
「善逸……だからお前は……」
「うるせぇちくしょう。ちょっと心の準備に時間がかかってるだけだ俺は。俺も行くよ行くったら!ちょっと待ってくれよ」
「善逸……」

光希は炭治郎と伊之助を見る。

「俺、善逸と行くから、先に行っててくれ。後から追いかける」
「わかった」
「あいつと組んで大丈夫かお前」
「大丈夫だ。炭治郎、伊之助、死ぬなよ」

そう言って、光希は二人をぐっと抱きしめた。

「先に行く!」
炭治郎と伊之助が走り出す。


二人を見送った光希は善逸に駆け寄る。

「ほら、俺らも行くぞ。立て」
「うぅぅ…怖い怖い怖い……」
「だから、ここに居ろって言っただろう」
「うぅぅぅぅ……だって……」

動けない善逸を見て溜息をつく光希。


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