第1章 彼と私
私に聞かれても…といった様子で私は返答した。
周りを見てみると、ここはどうやら家の中だ。
と、いうことはおそらく、この銀髪の人の…。
「全然気配感じなかった。ちょっとありえない。
ほんとどこから入ってきたわけ?」
冷たく冷静にその男はいった。
「あの…すいません…私もよくわかんないです。
その…何かにつまづいて、そのままこけたと思ったら、ここに…」
男は困ったような、あきれたような顔をしてため息をついた。
私だって、好きでこうなっているわけではない。
しかも知らない男の家で、そいつは左目に傷があって、怒ってるし、なんか恐いし…と、どんどん不安でしかない状況に涙目になった。
「はぁー…わかった、怒らないから泣かないで。
泣かれたほうが、こまるから。
俺も気が立ってたからごめん」
そういって彼は、私の頭にポンと手をのせた。
そのあと、彼はキッチンに行った。
コーヒーを飲むか聞かれ、いただくことにした。
コーヒーを飲んで少し落ち着いた。
いやゆっくりしている場合ではない。
「あの、ここどのあたりですか?私、家に帰ってる途中で、私の家は○○に近いとこなんですが」
「○○?…聞いたことないけど、それって何?里の名前?」
「…里…?」
「うん、ここは火の国、木の葉の里」
私は、窓に走ってベランダにでた。
全然知らない景色と街並みがそこに広がっていて、星空は私が見たものよりもはるかにきれいだった。
「その様子だと君のしってる場所とは全然違うみたいだね」
そう後ろから言う彼に、私は振り向いて無言でうなずいた。
そこから彼と私はお互いにわかることを伝えあった。
もう信じられない。このご時世に忍びやら、戦争やら、私には縁のない話ばかり。
おまけに、私は、部屋でくつろいで本を読んでいた彼の上から、突然落ちてきたらしい。
彼は、かかしさんという忍びをやっている人だ。
身長も高く、ノースリーブの黒い服から出ている腕は細くもとてもたくましかった。
そうとう鍛えているのだろう。
なんかマスクで顔全体はわからないけど、左目には傷があって、閉じている。
左目、見えないのかな…
でも…今頼りになるのは彼しかいないのだ。
「あの、なんかよくわかんないし、でも頼る人もいなくて、ほんとに申し訳ないんですけど、…助けてください!」
もう涙目で訴えるしかなかった。