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【YOI】僕達のif【男主&勇利】

第1章 はじまり


その後、純の様子に気付いた恋人の藤枝をはじめ、勇利とヴィクトルによってどうにか落ち着く事ができたものの、それでも過去の自分の行いがもたらした現状に、純自身もこのままではいけないと考えていた。
宮永の提案は、それらを払拭する絶好の機会には違いない。
だが、
「僕はともかく、勇利の意見も聞かんと…」
「勝生くんにも既に連絡済みだよ。ヴィクトルと一緒に帰国するまでもう少しかかるけど、上林くんがOKなら引き受けるとの事だ」
さらりと返された言葉に、純は口を噤む。
「そこまで難しく考えなくてもいいんじゃない?俺だって、見込みのない事を君達に押し付けるつもりはないし。もっと上林くんは自分に自信を持って良いと思うよ」
「はい…」
そう言って立ち去ろうとした宮永は、数歩足を進めた後で何かを思い出したように振り返る。
「一度、勝生くん達が戻ってくる頃にでも打ち合わせをしよう。場所は大阪のあそこのリンクだ。…まあ君も、ひと当てふた当てくらいは覚悟しないといけないかもね」
そう言って苦笑した宮永に、純は眉根を下げると僅かに口元を歪めた。

(もう1年頑張ってみろや!お前と同じ怪我をしたアスリートで復帰した人かておるやないか!)
(何でや!何でそんな簡単に諦める事ができんねん!?)

怪我をして自暴自棄になっていた時期、特に熱心に純に対して競技復帰を勧めてくる人物がいた。
今ならば彼の気持ちが理解出来なくもないが、当時の純にはそれらに応えられるほどの余裕がなかったのだ。
自分や勇利と同年代だった彼は、学生卒業と同時に競技引退した後、現在ではノービスやジュニア選手のコーチをしていると聞いている。
突出した才能があった訳ではないが、良くも悪くも基本に忠実で、競技者として必要な要素は備えていたというのが、純の彼に対する素直な感想であった。
「…きっと、君は今でも僕の事を許してへんのやろな」
スマホから呼び出した当時の自分と彼の画像に触れながら、純は様々な思いを込めた溜息を吐いた。
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