第13章 木の葉へ
しばらく黙ったあとテンはこういった。
「ギリギリセーフだ」
「…は…?」
「俺は、ここに来る前に俺の力の一部をりかに託しておいた。
あいつが2回目の神威を使ってここに来ても、体の負担が強すぎて、お前とちゃんと話せないと言うだろうと見越してな。だから、ここに来た時にあいつは倒れてなかっただろ?あれは俺の力の影響だ。
本来は、俺の力が消えるまで、少しの時間お前と過ごしてから俺とあの世へ行くつもりだった。
だが、里のこの状況にそうもいってられなくなって、お前を探して、そのあとは‥まぁ今にいたるってわけだ。」
俺は、無言で彼女を見つめていた。
「まー……こいつが3回目の神威を使うとは思わなかったし…
まさかのお前もこいつの気持ちに向き合うと覚悟を決めてるのも予想外だった…
どーせこいつがお前のために、お前らの里のために命を投げ出すとこを目の当たりにして、もっと深く自分の気持ちに気づいたってとこだろ?」
図星だった。
もう彼女と向き合う覚悟をしていたが、あのフラッシュバックを通してりかに対する思いが、火影という立場の殻を容易にやぶって溢れていた。
「火影の立場にのまれすぎだお前。
火影のまえにお前ははたけかかしだろ。
お前が自分自身をちゃんと理解できないで、どうやって他のやつらを理解できる?
こんなギリギリにならなきゃわからないでどうするってんだよ」
そうだ、俺はいつも気づくのが遅い。
言われていることがあまりに妥当すぎて何も言い返せれなかった。
仮にも俺よりあきらかに若い奴がこうも簡単に見抜いてくる。
まいったね…
「ラッキーだぜ。
俺の力を貰ってた分、3回目の神威に耐えれたんだからな。
それに、期限の1年までは…実質あと1日残ってる。」
「じゃあ…りかは…」
「ああ。残念だが、俺はこいつを一緒に連れてけねぇよ。
もう神威も使えない。自分の世界にも帰れねぇ。
あとは、かかし。お前が何とかしろ」
「…っ…」
りかの心臓の音を改めて確認して、すぐに医療班へたくした。