第11章 テン
俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。
テンは、俺の言葉を待つこともなく続けて言った。
「りかは、死神の、俺の目にとまった。
俺はただ命を奪ってるんじゃない。
条件もつけて、それにのるか、のらないか本人にも確認している。もちろん責任は本人次第だ。」
俺はテンが死神と聞いて、命を条件にすることに納得いった。りかも、それに関しては自分がその条件に簡単にのったことが悪いと言っていたのを思い出した。
「お前は、自分の感情に嘘つく必要もない。
実際お前らは生きてる世界も違う。
これ以上気にしてどうする?
安心しろ、りかが死ぬときは苦痛なんか与えない。
りかは、俺にとっても特別だ。」
「‥‥俺は、ずっと考えてた。
でもまだ自分の気持ちがよくわからない…
この俺の立場と、その契約の時間制限に焦りを感じて‥。
でも、なんとかりかの命をとらないですむ方法はないのか?」
テンはあっけらかんとして答えた。
「だったらお前の命を差し出したらうまくいくかもな。
ま、でも正直そんな代替えみたいなこと今までやったことねーよ。だからうまくいく保証もねぇ。
でもそんなことしたら、りかが俺を許さないだろうけどな。
それに実際、俺はお前の命に興味ねぇ」
あくまでも命のやりとりが前提ということなのか。
聞いている限り、条件解除は皆無に等しいな…
「俺は、もうりかには会えないのか…?」
「会ってどうする?会って期待させるだけならやめとけ。」
「…俺は彼女に対して何も返事を返せてない。
その日が来る前にどうにかして彼女と話しをする時間をくれないか?どっちに転ぼうが、自分の気持ちははっきりさせて伝えたい。彼女がそうしてくれたように」
テンは腕組みをしてしばらく考えていた。
「‥…はぁ…まぁどうにかしてみるか…
だったらそれまでにはっきりさせとくんだな、お前自身の気持ちを」
「あぁ。感謝する。」
「じゃ、俺はもどる。」
テンはそういって光の玉に戻り、消えていった。