第8章 8
さくらサイド
えまはいつも香蓮さんのお世話を完璧にこなしている。
香蓮さんがえまに影響されて、あんな儚くもろかった姿が、今や見違えている。
病室にただいるだけだったのに、最近はあれがしたい、ここにいってみたいと自ら希望を言うようになった。
香蓮さんの病気は治ったわけではない。
でも精神的にえまによって救われているのだ。
病院の誰もがそれを実感している。
一度、院内でえまを見かけたとき、えまはかかし先生と話していた。
かかし先生が、えまの頭をポンポンとしたあと先生は帰っていってしまったのに、えまは病室にもどらず、先生が見えなくなってもずっとたたずんで、先生がいたであろう場所を見つめていた。
昔、去っていくサスケ君の背中を見つめていた自分が重なった。
えまは泣いていない。
でも後ろ姿はとても切なく小さくみえた。