第6章 やがて糸は火となり繭となる 2
山を降りてから、ジェイドはそのまま寮へと戻って行き、そしてフロイドはユウをオンボロ寮まで送って行った。
彼女の服は制服に戻っている。またジェイドがマジカルペンを一振りし、着替えさせてくれたのだ。
寮までの道のり。特に何かを話すことはなかったが、沈黙が気まずいとは思わなかった。
寮までの道は暗く、フロイドがマジカルペンで先を照らしながら歩く。
揺れる赤い糸が時折手に当たる。
フロイドがユウに視線を向けた。彼女もそれに気づきフロイドを見上げる。
自然と2人の歩みが止まった。
フロイドの顔がマジカルペンの光にほのかに照らされている。高い鼻が彼の顔に影を作った。ユウはそれを見て、まるでハリウッド映画に出てくる俳優のようだと思った。
お互いを繋いでいる30センチの赤い糸を、フロイドが引っ張る。
ユウはフロイドの方によろめいた。
手を握られている。
ユウがそれに気づいたのは、止めていた歩みを再開した時だった。
肩を掴まれた時、布越しであったためか感じなかった彼の体温が、今回は伝わってきた。
それでもフロイドの体温は低く、手を意識することでほのかにじんわりと温もりを感じた。
ドッドッドッ
まるで心臓の中に小人がいて、太鼓でも叩いているかのようだった。
静かな夜に、自分の心臓の音がフロイドに聞こえてしまうのではないかと、ユウは心配になる。
暗いから大丈夫だと分かってはいるが、ユウはその赤い顔がバレないように下を向いた。