第15章 引き合うさびしさの引力
付き合って2週間が経った頃。
"そういう雰囲気"になった。
夜の夜景が綺麗な公園。
ユウの腰に彼の手が回る。
彼の手はとても熱く、服の上からでも彼の体温をありありと感じた。
ゆっくりと、重ねられた唇は手と同じように熱い。
ぽろり。
頬に涙が流れる感覚に、気づくとユウは、無意識のうちに彼を突き飛ばしていた。
「ご……ごめんなさい」
ユウは慌てて涙を拭い謝るが、耐え切れずその場から走り去る。
ヒールで走りづらいのにも関わらず、街の中を全速力で走った。
行き交う人が、みんな彼女に視線を向ける。
それでも彼女は走り、気づけば自分の家まで戻って来ていた。
玄関にヒールを脱ぎ散らかし、自分の部屋に飛び込む。
そして扉の前でしゃがみ込むと、声を出して泣いた。
その姿は、あのダンスパーティーの日にオンボロ寮で泣いていた姿と重なった。
腰を抱かれた時、違うと思った。
キスをされた時、違うと思った。
"彼"の手はもっとひんやりとしていて、唇だって少し冷たい。
彼はもっと熱っぽい目で見つめてくる。
彼はもっと………。
「フロイド先輩……」
恋に生きることなんて出来ないとユウは言ったが、今ならそんな事ないと自分自身を否定することが出来るとユウは思った。
今そんなことを思ってももう遅いのに。
ひっくひっく。と、ユウは喘ぐ。
部屋には彼女の泣き声だけが響いている。
しかしその時、
「小エビちゃん」
それは小さな小さな声だった。
彼女の泣き声に負けてしまうくらいの声だった。
しかしユウは聞き逃さなかった。
聞き慣れた、しかし待ち望んでいた声だ。