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月神の恋人 【鬼滅の刃 黒死牟 R18】

第6章 ※夜這い星の褥※


「キリカ、どうした?」

重ねて聞かれ、キリカは黒死牟から視線を反らしたまま重い口を開いた。

「私、あなたに謝らなければなりません・・・」

「何を、だ・・・」

「申し訳ありません。私は性根の醜い人間です」

「・・・・?」

黒死牟が怪訝な顔をした。キリカの言葉の真意を汲みかねているのだろう。それが痛いほど分かったが、キリカは核心に触れてよいものか躊躇っていた。

「先ほど・・・・」

一度、目を伏せ、ゆっくりと言葉を紡ぎだした。

「先ほど、巌勝様の奥方様の話をお聞きした時、私は嫉妬をしてしまいました・・・」

「嫉妬だと・・・」

「はい・・・。身のほど知らずなのは、重々、承知しております。ですが、どんなお方なのか想像せずにはいられなかったのです」

武家の棟梁の奥方ともなれば、血筋も見目も心根も素晴らしく、非の打ち所もないような存在なのだろう。さぞや、お似合いの夫婦だったに違いない。

(お子様までいらしたなんて・・・・)

幸せそうな一家の姿がキリカの脳裏に浮かぶ。キリカの知らない黒死牟の姿に、胸が締め付けられるような思いだった。

「お許しください。あなたはあなたで辛い過去があったのを知っています。ですが、私は、あなたに奥方様がいた事をお聞きして、ほんの一瞬でも醜い感情を抱いてしまいました・・・」

キリカが声を詰まらせる。涙をこらえるように、唇を噛んだ。

「そのような事を気にしていたのか・・・?」

黙って聞き入っていた黒死牟は呆れたように息を吐いた。キリカの両の頬に手を当て、視線を反らせぬよう固定した。

「あれとは政略結婚だ・・・。好いて一緒になったわけではない・・・」

「ですが・・」

「顔も覚えておらぬ・・・。鬼狩りになる時、妻子は置いてきた・・・。それきり会ってはおらぬ・・・」

諦めの強い、悲しげな声音で黒死牟は淡々と語った。

後悔の念が、キリカの中に流れ込んでくる。何も言い出せなかった。自分だけ辛いのではないのだ。それどころか、何気ない言葉によって黒死牟の心の傷を抉ってしまった。それが堪らなく辛い。

「それより・・・、キリカ・・・、おまえに聞きたい事がある・・・」

キリカの身体がびくり、と震えた。

















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